野火止のそぞろ歩きや冬日濃し ／勝美
冬の朝血潮漲る掌をかざし ／勝美
被写体に移ろふ影や日短か ／勝美
石塔の欠けるにまかせ寅彦忌 ／勝美
珊瑚樹の実や御利益の降るごとく ／勝美
紅葉散る一期一会を旨として ／勝美
鐘の音に紅葉散りゆくばかりなり ／勝美
ひねもす俳句：旅の空
はや冬は塀のそばまで来てをるぞ ／勝美
冬ざるる町や無人の販売所 ／勝美
道具立てよし語らひの場の落葉 ／勝美
いのちまだ漲る冬の飛蝗かな ／勝美
高速路は名残の空へつづきけり ／勝美
神の旅カーナビといふ優れもの ／勝美
ひねもす俳句：冬の前ぶれ
冬眠の迫るかはづの思ふこと ／勝美
落書きに意味あるごとし冬ざるる ／勝美
ひねもす俳句：秋の路
木犀の金の降る径至福の歩 ／勝美
花水木の実の色付きし被災の地 ／勝美
ひねもす俳句：食欲の秋
山猿の謀議しきりや蜜柑山 ／勝美
団欒の灯に甘露煮の栗の艶 ／勝美
ひねもす俳句：霧雨の夜
秋霖や尾燈の光る帯しきり ／勝美
肌寒し通過電車の起こす風 ／勝美
哀しみの身に霧雨の傘重し ／勝美
ひねもす俳句：秋のとばくち
青ふくべ物いはざれば腹ふくれ ／勝美
粧ひの整はぬまま初紅葉 ／勝美
美しきものは美を呼ぶ秋あざみ ／勝美
竹の春風百幹を離れざり ／勝美
ひねもす俳句：残暑の山にて
遠目にも松虫草と判る色 ／勝美
ポトフ鍋主役を秋の野菜とす ／勝美
ほとばしる水の白さよ秋の滝 ／勝美
ひねもす俳句：秋始め
鳥渡る風車見る見る遠ざかり ／勝美
街の声常に戻るや台風過 ／勝美
売出しの更地に残る虫の声 ／勝美
ひねもす俳句：夏から秋へ
皺深き貌となるまで梅を干す ／勝美
塵払ふ敬老の日の古道具 ／勝美
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